1996年に操業を開始した東京都杉並区の杉並中継所。収集した不燃ごみを江東区への処理施設へ運搬するに当たり設置されたこの中継所の操業開始後、周辺住民に視神経異常などの化学物質過敏症に類似した健康被害が発生しました。
2002年に被害者を中心とする住民の申請により、公害等調整委員会が「被害の原因は杉並中継所の操業に伴って排出された化学物質である」という旨の裁定を行ったが、「中継所の排水処理・換気処理が改善により汚染物質の放出が低減された以降に生じた化学物質過敏症の症状については、中継所の操業と関連を認めることは難しい」と判断しています。
杉並中継所は2009年3月末で廃止されましたが、今もその健康被害や住居を追われる等により、苦しんでいる被害者は存在し続けています。また、この教訓が生かされずに大阪府寝屋川市で「寝屋川病」が発生し、その悲劇が繰り返されてしまいました。
私たち特定非営利法人化学物質による大気汚染から健康を守る会(通称VOC研究会)は、2010年1月に杉並病の被害を受けられた方々、また杉並病に関心を持っていただいた方々を中心に、「なぜ杉並病が起きたのか?」「原因は?」「将来同じような被害に遭わないようにするにはどうすればいいか?」などの問題解決のために作られた法人です。当初は杉並病を起こしうる可能性の物質に関して様々な検討をしました。その中でイソシアネートという特段に健康に危険な影響を及ぼしうる化学物質が環境に現れ、被害者が相当数あり、利用新製品が拡大するにつれて健康被害者が増加していることに注目し検討を始めました。
イソシアネートは工業的な生産が開始されるとすぐに職場での喘息などの発症者が多くあらわれ、職場環境の管理に注意が払われていました。しかし、建築など一般市民の身近な環境でも使われるようになってからも日本では広く啓発されることもなく、そんな危険な物質がすぐそばで使われていることも、自分が使っていることも知らずに健康を損ねている人もあります。
当会は創設から故津谷裕子さん(2021年2月17日永眠)が会としての方向性を示唆し、調査・研究を進められてきた会です。今まで津谷さんを中心としてたくさんの方々にご協力いただき、多量のデータが蓄積されてきました。そのすべてを個々のページに開示することはできませんが、イソシアネートを始めとして大気汚染を起こしうる物質の調査・研究をなされ、研究会などで報告された内容などを載せさせていただきます。皆さんの健康を守るためにお役に立てていただくことを願っています。