2.香りについて

 毒性が強くない石油成分のトルエンと、毒性が強いイソシアネートを混ぜたものでは、トルエン濃度だけみるとわずかしかなくても、イソシアネートが隠れているのでその汚染は有害になります。

 つくば市を南から北まで古い街を走り、帰りは新しい街を走りました。新しい街は全面的にイソシアネートがありました。

 化合物の組み合わせと香りは、化合物の組み合わせで変わります。香料の化学で最も重要なことです。香料は複数の化合物をある一定の割合で混ぜる、複雑な匂いです。決定的内容はブレンド技術なので、調香師確保(育成)とノウハウ(調合技術)の経験の蓄積で作るので簡単には真似できないものです。調香師は、2,000種類を超える原料と香りを記憶して、数種類から10種類程度の香料のバランスを香りだけで再現する訓練、10年程度経験を積んでいます。

 エステル類は、そのほとんどが軽い果実のような匂いをもっています。そのほかにもα-ジケトン(ケトンを分子内に二つ持っている化合物)は、カラメルよう香気といわれる、砂糖の焦がしたような甘い匂いをもっています。

 

 cis-ジャスモン酸メチルがtrans-ジャスモン酸に比べてはるかににおいが強くジャスミン香気があります。

 

 バラの花から単離されたゲラニオールは、トランス体であるし、すみれの花の香りのするイオノンも二重結合はトランス体です。

 

 アルコールの位置が異なったα-フェニルエチルアルコールは、バラの花からは程遠いにおいがします。官能基の位置の異なった異性体化合物では、ラズベリーの味も香りもなくなってしまいます。

 天然のハッカからとれるのは、l-メントールと呼ばれる立体化学をもつものだけであります。また、他の光学異性体に比べて、強い匂いと長時間持続する清涼感があります。非常に強いグレープフルーツの香りのする、ヌートカトンがあります。じゃ香の成分がワァルバウムによって初めて単離され、この単離された化合物の組成式はC16H30Oでありケトンの化学構造を持っています。

 

 αヨノンは「香りの化学1」に書いたように香料として用いられ、βヨノンはビタミンA、ビタミンE、カテロイドの合成原料として重要です。シンナミルアルコール(ケイ皮アルコール)という香料は優秀な香料です。